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「AI創作物の著作権保護に係る近時技術進歩に伴う法政策再論の可能性」

2023.09.25

 現下 2023 年までの数年間にて AI テクノロジは、その新たな深層学習技法による機会学習を通じて非常な進化を遂げつつあり、かかる AI モデルによる自律的に作成された創作物(「AI 創作物」)は、全く新規の画像を自律的に作成する「テキスト・トゥ・イメージ」ファンクションを完全に実現するものにまで進歩を遂げており、その我が国での著作権保護の是非が近時大きな関心を集めています。
 かかる我が国知的財産戦略本部報告(2017)以降の近時数年間の AI 技術進歩に鑑み、イ)AI 創作物保護が先行する英米法圏法制(英国・英連邦構成国など)及び、AI 創作物保護に向けた積極議論が近時確認される大陸法圏法制(中国など)での法政策動向が注目を集めており、またこの結果、ロ)我が国法制下での AI 創作物の著作権保護実現における障壁たる伝統的「創作性」概念理解(同法第 2 条第1項第1号)のあり方につき、比較法学と法政策学論の観点から再検討を行うべきではないか、との問題提起が行われつつあります。
 具体的には、過去の我が国戦略本部報告(2017)では AI 創作物の著作権保護につき否定的な結論が示されているものの、イ)英国法制では同国 1988 年法制により、従来からコンピュータ創作物の一部としてAI創作物への著作権保護が制定法上堅持されている状況にあり、またロ)中国法制においても 2019 年の地方裁判所判決により、AI 創作物の著作権保護が現行著作権法下での(伝統的「創作性」概念を覆す)新たな法解釈により肯定されている事実が確認されています。
 以上の AI 技術進歩下での近時各国動向に鑑みれば、我が国においても、著作権法第 2 条第1項第1号における伝統的「創作性」概念規定のあり方を見直し、AI 創作物をその保護対象として著作権法上に明示する立法施策の可能性を具体的に検討すべき段階にあるのかもしれません。今後の我が国戦略本部の指針・ガイドライン等動向が注目されるものと考えます。

日本弁理士会中国会 弁理士 竹内 誠也