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最近の著作権の裁判例について

2023.10.10

 7月末に大学で著作権法についての講義をする機会をいただきました。この講義をするために、著作権に関する最近の裁判例について、裁判所の裁判例検索サ
イトで調べてみたところ、最近の著作権法に関する裁判例では、「発信者情報開示請求」の訴訟が多く掲載されておりました。
 著作権での争いの主戦場は、紙媒体の訴訟から電子媒体の訴訟に移って来ているようです。「発信者情報開示請求」の訴訟では、インターネット上にアップロードされたSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)に自分の著作物を複製かつ送信可能化されたとして、自分の著作物を複製かつ送信可能化した者に対して訴訟を提起する訳ですが、SNSにおいては、その者が誰であるかの特定は難しいので、その前段階として、特定電気通信役務提供者である、SNSを運営する事業者(コンテンツプロバイダ)や携帯キャリア等(インターネットサービスプロバイダ)に対して、自分の著作物を複製かつ送信可能化した者のユーザー名やメールアドレス等の開示を求める訴訟になります。その訴訟においても、自分の著作物を複製かつ送信可能化したとする原告の主張に正当な理由があるか、判断されて判決が出た後に、著作権を侵害した者の情報の開示を受け、その後、著作権を侵害した者に対して訴訟を提起する必要がありました。発信者情報開示請求の訴訟が増えたためか、令和4年10月1日に法律が改正され、非訟事件として、発信者情報開示命令申立てという簡略された手続で行えるようになりました。
 一億総クリエイターの時代になったと言われておりますが、一億のクリエイターが故意または過失でパクリが出来る時代になったとも言えるかもしれません。

日本弁理士会中国会 弁理士 木村 正彦