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「審査結果を早く知りたい場合~早期審査制度~」

2024.03.04

節分の翌朝は、道路のあちこちに豆が落ちているのを見ます。節分当日の朝は事前に神社から授かった人型で体をなで息を吹きかけて穢れを払ったり、蕎麦を食べたりするという風習は、まだ残っていると願いたいです。
さて、節分が終わると受験シーズン本番で、いずれにせよ合否は早く知りたいものですが、特許でも、商標でも、結果を早く知る方法があります。早期審査制度です。
まず、特許の場合は、出願すれば自動的に審査される、ということはなく、出願人側から出願手続とは別に「審査請求」という手続をおこなう必要があります。出願日から3年以内に手続をします(出願と同日でも可)。3年経過すると、取り下げられたものと見なされてしまい、同一発明では誰も権利がとれなくなります。販売等公表していないからということで同一発明を再出願したとしても、元の出願については出願公開されているため新規性なしとなるからです。なお、気をつけていただきたいのは、審査請求期限の末日等について特許庁から注意喚起の連絡等は来ない点です。特許の維持費用の納付についても同様です。自己管理が原則です。
さて、この審査請求がなされると担当審査官が決まり審査が開始されます。最近は審査も早くなり、審査請求から1年弱で結果(登録査定通知もしくは拒絶理由通知)がやってきます。
この審査自体を早めたい場合は、早期審査の事情説明書を特許庁に提出します。対象となる案件に制約がありますが、おもだったものは、①発明品を既に製造販売等している案件、②外国にも出願している案件、③中小企業・個人・大学の案件、④環境改善に関する案件、などがあります。いずれかを満たしていれば結構です。特許庁に対する費用(印紙代)は発生しませんが、手続き書類の中で、従来技術との対比をした説明等が必要となり、これを特許事務所に依頼すると費用が発生します。
早期審査の手続きをしてから1~3ヶ月で結果が帰ってきます。通常の審査と同じく拒絶理由通知である場合が多いですが、登録査定通知の割合が相対的に高いようです。これは、審査が甘いのではなく、早く権利を取りたいと考える発明は、自信があるといいましょうか、特許性がそもそも高い発明であるようです。
審査結果が早く帰ってくるのは、一長一短であるといえます。出願と審査請求と早期審査の手続きを同日におこなって一発登録となれば、それこそ特許権はほぼ20年まるまる存続させることが可能です。一方、拒絶となれば、他人にアイデアを渡してしまうことになります。時には、「出願中」という状態を長く保っておく、すなわち、出願して3年ギリギリで審査請求し、1年後に拒絶理由通知が来て、これに粛々と応答するという使い方があり、これだと、最終的に拒絶査定となったとしても、出願から4~5年程度は出願中の状態を保てます。他社参入の抑制効果を期待することも出来ます。
なお、かなりテクニカルですが、早期審査をして出願公開前に拒絶査定が確定した場合は、製品発表等をしていなければ、発明は新規性を失わないので、拒絶理由内容を参酌しつつ改良し再出願して権利化を図るという手もあります。
一方商標は、全件審査され、特許のような審査請求手続は不要です。審査期間も大抵は6ヶ月程度ですので、あまりメリットはないかもしれませんが、他者から警告を受けている場合や使用許諾も申し出を受けている場合、所定の商品・役務のみを指定している、などの場合が早期審査の対象となります。2ヶ月位で結果がかえって来ます。

日本弁理士会中国会 弁理士 Y.T