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「AI関連発明の特許出願状況」

2024.03.19

AI関連発明の特許出願件数は、五庁(日米欧中韓)の全てで増加していますが、特に米国と中国の件数が突出して多い状況にあります。米国のAI関連発明の特許出願件数は日本の約10倍、中国は日本の約25倍です。
AIの基礎となる数学的又は統計的な情報処理技術に関連する発明は、AIコア技術として分類され、特許庁内では G06N という分類記号が付与されます。この G06N が付与された出願割合は、全AI関連発明の15%程度に留まっており、それほど多くはありません。
では、AI関連発明としてどのようなものが出願されているのか見てみると、多い順に、画像処理、ビジネスモデル、医学診断、材料分析、音声処理、映像処理、交通制御等があり、特に画像処理の出願件数は、AIコア技術よりも多くなっています。
この傾向から何が言えるのかというと、「AIコア技術を出願するのは主流ではない」ということです。すなわち、AIの基礎となる数学的又は統計的な情報処理技術が重要なことは間違いありませんが、そのような情報処理技術は、特許権として20年間保護する間に、様々に変化していく可能性があるので、情報処理技術の保護に注力するよりも、情報処理技術を応用した画像処理等のアプリケーションの出願に注力されていると言えます。例えばAIを利用して画像処理を実行する際、AIに入力する画像の前処理に特徴を持たせるのか、AIから出力された画像の後処理に特徴を持たせるのか等、色々な工夫点があると思いますが、これらはAIのアルゴリズムに依存しない場合が多くあります。
したがって、アプリケーションの出願時には、現在のAIコア技術に頼った出願をするのではなく、将来、AIコア技術が変化したとしても適用可能な権利範囲を構築しておく必要があります。また、そのような権利範囲を構築するために実施形態として記載すべき内容、データ等も出願時によく検討しておくことが重要です。

日本弁理士会中国会 弁理士 齋藤 克也