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「前記ですか!前記があればなんでもできる!」

2024.04.02

プロレスラーのアントニオ猪木氏が亡くなってもう1年半が経とうとしています。ところで、特許請求の範囲の中で最も使われる単語はなんでしょうか?それは「前記」です。
「前記」は文字通り「前の部分で既に記した」という意味ですが、特許請求の範囲の中では、最初に登場した用語○○を繰り返す際に、「前記○○」と記載されます。「前記」(又は同じ意味の「当該」、「該」、「上記」等)を使用することは、法律や規則で決まっているわけではありません。しかし、「前記」を付けていないと審査に際して「『前記』が無いため既出○○なのか初出なのかが不明なので、発明が不明確である」といった内容の拒絶理由通知を受けることがあります。ですので、実務上は「前記」は必須といえます。
さて、多用される「前記」ですが、特許公開公報を読むとたまに「前記前記」という言葉を目にします。例えば、特許請求の範囲の中で、対戦相手、対戦相手の延髄、対戦相手の延髄へのキック、が順に出てくる場合、「対戦相手」、「前記対戦相手の延髄」、「前記前記対戦相手の延髄へのキック」と記載することがあり得ます(他の書き方もできますが)。
ならば「前記」は何回繰り返せるのか?意味はありませんが気になります。そこで J-platpat で検索してみました。ヒットした文献の件数は以下の通りです。
「前記」…1100万件以上
「前記前記」…4万件以上
「前記前記前記」…15件
「前記前記前記前記」…0件
現時点での最高記録は「前記前記前記」となりますが、この15件を読んでみますと、残念ながら多くはミスタイプのようでした。私の見たところ、筋の通った「前記前記前記」は2件だけでした。もしも「前記前記前記前記」が実現できれば、前人未踏の大記録誕生といえるでしょう。

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