知財コラム

「生き物、預かります」

私事ですが我が家には柴犬がおり、家族旅行に行く時にはペットホテルに預けることがあります。受付カウンターで放尿するなど躾が行き届いておらず、スタッフの方に(柴犬だけに)しばしば迷惑を掛けています。
ところで、特許の世界でも生き物を預かってくれるところがあります。独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の特許(微)生物寄託センターという機関が、微生物、種子、受精卵などを預かってくれるのです。
物の発明について特許出願する際には、その物を作ることができ、かつ使用できるように明細書を記載しなければなりません。これは、特許出願された発明を第三者が追試することによって改良発明を促し、社会全体としての技術進歩を促進するという特許制度の目的に沿ったものです。第三者が追試できないのであれば、独占権だけを発生させてしまうことになり、社会全体の技術進歩に対してはむしろマイナスです。
微生物は、単離してその有用性を示せば特許されますが、第三者はそれをどうやって利用すればよいのでしょうか。明細書をいくら読んだところで微生物を作ることなどできません。
そこで、第三者の利用を担保するために、特許出願前に微生物を公的機関に寄託しなければならないというルールが設けられています。微生物の凍結乾燥試料などを作成して寄託センターに送り、その生存が確認されて初めて微生物の特許出願が可能となります。そして追試をしたい第三者は、寄託センターに申請することによって、その微生物を分譲してもらうことができます。
特許出願の際には、独占排他権を得ることばかりが意識されますが、特許出願された発明が第三者に利用されてこそ、国全体の産業の発達が望めます。特許出願された発明を第三者が利用できるようにすることは特許制度の根幹に関わる重要点であり、これを担保するために国は特許専用ペットホテルを運営しているのです。

(日本弁理士会中国支部 弁理士 中務 茂樹)

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