知財コラム

「ウソのような、ホントの話」

もう何年も前のことになります。
クライアントが輸入販売した商品につき、意匠権侵害警告を受けました。意匠権者は東京在住の個人で、弁護士 3 名を代理人とした内容証明郵便です。文面から強い意気込みが窺えます。
早速に特許電子図書館(現在の特許情報プラットフォーム)で意匠公報を閲覧し、当方の商品と比較。これはそっくりだ。逃げられんな。
クライアント曰く「つい最近発売したばかりで、納品先に顔向けできないから販売中止は避けたい。何とかなりませんか?」とのこと。では、実施許諾交渉か。応じてもらえるかなぁ‥‥。
問題の意匠権は登録後数年を経過していましたので、とりあえず経過情報を閲覧しました。あらら?今年の年金が納付されていないじゃんか!しかも、あと半月足らずで追納期間も過ぎるぞ!
意匠権は、毎年定められた額の登録料を納付しなければ存続期間満了まで権利維持できません。重要な権利では複数年分の登録料を一括納付することもありますが、棚卸的に1年ごと維持の必要性を見直しながら納付するのが一般的になっています(ゆえに「年金」と俗称されています)。なお、納付期限が過ぎても、6か月以内であれば同額のペナルティを納付すれば(つまり、本来の登録料の2倍額を納付します)引き続き権利維持できますが、この6か月も過ぎると天災地変等の特別な事情でもないかぎり意匠権は消滅します。
さて、前記警告事件。意匠権者には「事実確認中なので正式回答を猶予願いたい」旨だけ送り、登録料の追納期間が経過してしまうのを息を潜めるように待ちました。そして、リアルタイム情報が反映される意匠登録原簿を特許庁から取り寄せ、いよいよ年金未納が確認できたところで、「貴社意匠権は登録料未納により権利消滅となりました。よって、もはや意匠権侵害は成立しません」という趣旨の回答書を送付しました。

教訓:侵害事件では、権利の有効性を確認すること!

(日本弁理士会中国支部 弁理士 森 寿夫)

バックナンバー

知財コラムの一覧に戻る