知財コラム

「特許権取得の目的も色々」

弁理士がお客様から特許出願の依頼を受けた場合、少しでも広い範囲で特許権を取得できるように、請求項(特許を受けようとする発明の範囲を記載する部分)を広い範囲で記載することが多い。拒絶理由通知を受けても、それを解消できる範囲だけを削れば、最初から請求項を狭い範囲で記載していた場合よりは、広い範囲で特許権を取得することができるからである。これが、統計的にほぼ9割の特許出願が拒絶理由通知を受ける主な原因でもある。
あるとき、あるお客様から、ある仏具について特許権を取得したいとのご依頼があり、そのときの私も、請求項を広めに記載して特許出願をした。案の上、拒絶理由通知を受け、対応策等につき丁寧に説明したのだが、そのお客様は非常にお怒りになった。
そのお客様は、「ワシは、広い範囲で特許権を取得したいとはこれっぽっちも思っとらんのんじゃ!この仏具はなぁ、亡くなった嫁を供養するために考えたんじゃ!嫁に、お前の供養に使っとるこの仏具はワシが考えて特許権を取得した物なんじゃーと○回忌までに報告したいんじゃ!権利範囲なんてどんなに狭くてもええ!○回忌までに特許権を取得できるかが重要なんじゃ!」と仰られた。
それを聞いた私は、思わずほろっとしてしまった。「再度、拒絶理由通知を受けてしまっては、○回忌に間に合わなくなってしまうので、次でほぼ確実に特許査定が得られるというレベルまで範囲を狭めて対応します!」と提案し、ご了解を得た。その結果、特許権の取得がなんとか○回忌に間にあった。権利範囲は凄く狭くなったけど、お客様にはとても喜んで頂けた。
人生色々、特許権取得の目的も色々。権利範囲が広く取れるように、請求項を広めに記載して特許出願し、拒絶理由通知の内容を見て対応を考える…というのが弁理士の奢りであったことに気づかされた。まぁ、レアケースだけど。。。

(日本弁理士会中国支部 弁理士 黒住 智彦)

バックナンバー

知財コラムの一覧に戻る