知財コラム

「特許請求の範囲」

 特許出願書類を作成する際に最も苦労するのが「特許請求の範囲」の記載をどうするか、ではないでしょうか。「特許請求の範囲」には、特許を受けようとする発明を特定するための事項を記載しますので、この記載内容に基づいて審査が行われるだけでなく、将来的にはこの記載内容に基づいて特許権の権利範囲が定められるため、余分な記載を排除して、できるだけ広い権利を確保するべく、用いる言葉を逐一精査しながら、発明ごとに「請求項」に分けて記載するようにします。
 例えば、「不要な構成要件」や「不要な修飾語」を記載していないか。より広い概念の言葉が選択できないか、等々。ときには頭から湯気が出そうになるほど煮詰まりながら、出願発明に先行している技術を回避しつつ、最も広い範囲がカバーできるように各請求項の記載内容を工夫しようとするわけです。
 したがって、請求項を「筆。」といった一つの単語、しかも句点を入れて僅か2文字で記載できれば最も理想的と言えるのですが、長い産業の歴史に照らして、そんな単語だけで権利が取得できるようなことはまずないでしょう。では、何文字あれば特許になるのでしょうか?
 今までお目にかかった最も短い請求項は、句点を含めて僅か 10 文字でした。「請求項1 凍結ゼリー入り飲料。」以上終わりです。
 この特許発明は、例えば、ゲル化剤を加えて加熱後に冷却凍結し、さらに細砕工程により得られたオレンジジュース味のシャーベット状ゼリーをオレンジジュースに加えることで、ゼリーがオレンジジュースを薄めることなく氷のように冷却できるとともに、粉砕された凍結ゼリーが淡雪のような柔らかい食感で、ストローでも吸える、これまでに味わったことのない新しい飲料である、と記載されています。
 例年にない猛暑が続いているこの夏、冷えた「凍結ゼリー入り飲料」を飲みながら「特許請求の範囲」を考えましょうかね。

(日本弁理士会中国支部 弁理士 森 寿夫)

バックナンバー

知財コラムの一覧に戻る