知財コラム

「家紋と商標」

 平成29年8月の商標審査便覧に「家紋からなる商標登録出願の取り扱い(42.107.06)」が新設されました。新設された理由は、平成29年3月31日に確定した、異議2016-900059号の「三つ葉葵」の家紋(登録第5810969号)の商標登録が取り消されたことに関連しているのではないかと思います。
 審査便覧の内容の詳細は、省略しますが、登録の受けられない家紋の例が列挙されております。
 私は、時々家紋の標章を商標出願したいとの相談を受けることがあり、過去の登録例から類推して答えていましたが、今後は答え易くなるのではないかと思います。
 私は歴史小説や時代劇が好きです。その中では、鎌倉時代から江戸時代にかけて、武士にとって家紋は大変重要な役割を果たしている様に描かれています。
 例えば、武士が戦場で主君に認められるためには、自分が奮戦していることを主君に認めてもらう必要があります。そのためには、旗指物等に描かれた家紋は、重要な役目を持っていたそうです。また、江戸時代江戸においては、「大名駕籠見物」という楽しみが庶民にはあり、その際、家紋が誰の行列であるかを知る重要な手掛かりになっていたそうです。
 すると過去においては、ある意味家紋は、人物や家を識別するという商標的な役割を果たしたとも言えると思います。
 家紋のデザインは、前述の他人に自分を知らしめると言う目的から単純化しており、遠くからでもはっきり識別できる形状です。その形状も先人達の工夫により、動植物や幾何学等を単色で単純化しており、正方形や円の中に納まる様にデザイン化されています。商標として使用するには素晴らしい形状であり、歴史の事跡に繋がる権威も付加される場合もあり、価値のあるデザインになっています。
 観光立国を目指す我が国において、観光資源である城や神社・寺等の文化遺産と密接に関係している家紋の保護が見直されたのかもしれません。

(日本弁理士会中国支部 弁理士 木村 正彦)

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