知財コラム

「ライセンス契約の盲点」

 本日はライセンス契約(通常実施権許諾契約)の2つの盲点についてご紹介したいと思います。
1つ目の盲点は平成23年特許法改正で導入された当然対抗制度です。当然対抗制度とは、簡単に言うと、通常実施権者が通常実施権発生後の特許の譲受人等に対して対抗できる制度です。
 もっとも、当然対抗制度は、通常実施権の許諾以外のライセンス契約上の権利・義務を特許の譲受人等がそのまま承継することまでを保証したものではありません。つまり、独占・非独占の有無、サブライセンスの可否、ライセンス料に関する条項、第三者による侵害が発生した場合の対処に関する規定等については対抗できない可能性もあります。
したがって、これらの取り扱いについては、ライセンシーと特許の譲渡人と特許の譲受人との三者間において別途定めておく必要がありそうです。
 2つ目の盲点は特許権不行使条項(non-assertion clause)です。特許権不行使条項とは、特許権の権利行使をしないという消極的な文言を用いた条項です。すなわち、特許権不行使条項では、特許権についての通常実施権(ライセンス)を許諾するという積極的な権利許諾文言が用いられません。
 この点、通常実施権は不作為請求権(発明を業として実施しても特許権者から差止請求や損害賠償請求等の行使を受けない権利)であるというのが通説(中山信弘・特許法等)です。よって、特許権不行使条項と権利許諾文言を使用した条項とは実質的に同じであるから、両者を区別することに法的な意味はないようにも思えます。
しかし、当事者があえて特許権不行使条項を採用しているのだから、特許法上の通常実施権と同様の効果を与えるべきではなく、通常実施権に対して認められている当然対抗制度の適用を排除すべきであるとの見解(飯塚卓也「当然対抗制度」ジュリ 1437 号 79 頁)があるようです。
 したがって、特許権不行使条項を用いたライセンス契約書案がライセンサー側から提示された場合、上述した見解があることに鑑み、ライセンシー側は積極的な権利許諾文言に修正しておく必要があるかも知れません。

(日本弁理士会中国会 弁理士 泉 良裕)

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