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「AI関連発明」

2023.05.22

 近年、AI関連発明に関する出願や抵触調査、先行技術調査を手がける機会が増えてきました。ご存じのように、AIは例えばスマートフォン、自動車、白物家電、生産設備等、様々な分野で広く使われるようになっています。
 しかし、AIの基盤である深層学習を可能にするニューラルネットワークについては、単なるパラメータの羅列でしか表現できず、そのパラメータの値がいくらであれば有能なAIと言えるのかユーザサイドで判断する手段がありません。有能なAIであるかどうかは実際に運用してみて初めて分かることであり、現在の学習度が高いのか、更なる学習度の向上が望めるのかも、ユーザサイドで判断するのが困難です。
 さらに、AIも人間と同じく万能ではなく、ある方面には強いが別の方面では弱かったり、初めて見るものを誤って判定したりする傾向があります。
 AI関連発明の相談で多いのは、「従来の判断をAIにやらせるとうまくいったので出願したい。」という、AIへの単なる置き換え的な発想に基づくものです。でも本当にそうなのでしょうか。AIは上述したようにユーザサイドで判断できない未完成な部分や、判断が不得意な部分があります。そのようなAIの弱点をうまく補うことでその発明が成立したのではないでしょうか。そうであるとすると、AIへの単なる置き換えではなく、AIに任せるに当たっての工夫点が存在していることになり、そこに特許の進歩性が認められる可能性が出てきます。
 例えばAIを学習させる時に工夫して学習度の更なる向上を図ったとか、誤判定防止のためにAIへの入力情報を工夫したとか、いろいろな工夫点が盛り込まれているはずです。どのような観点でAI関連発明を権利化するかは弁理士にご相談いただければ明確な方針を示すことができます。
 今後、AI関連発明の重要度はますます高まってきます。他社に先駆けて早い段階でAI関連発明を権利化して事業活動の武器とすべく、そういった知財活動にも力を入れていく必要があると考えます。

(日本弁理士会中国会 弁理士 齋藤 克也)