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「キャラクターものと契約」

2023.08.09

しばらく前から、ゆるキャラを初め様々なご当地キャラがもてはやされています。代表格は熊本県の「くまモン」であり、近頃は大阪・関西万博の「ミャクミャク」でしょう。県や市町村の方から、よく相談を受けます。キャラクターの留意点について紹介します。
まず、キャラクターについては、キャラクター権という独自の権利があるわけでなく、主として著作権(著作権法)の問題となります。著作権は、簡単にいえば、複製許諾(コピー)の権利(ライト)であり、勝手にコピーするとダメよ、というのが一つの柱ですが、実はこれだけ注意していれば良いというものではありません。権利の帰属と行使制限の問題があります。ここでは、県がキャラクタデザインを公募し、採用後、着ぐるみも作る場合を考えます。
 
1)公募段階:(A)採用された場合は、著作権は、翻案権等(著作権法27条)および二次的著作物の利用に関する原著作者の権利(同28条)を含め、著作権に関する総ての権利が県等に帰属する旨、および(B)著作者人格権は行使しない旨を明示する必要があります。採用された後に、応募作品に一切の変更を認めない、と原著作者に言われてしまうと、利用者側の利便性が著しく損なわれるためです。
 
2)契約段階:上記の文言に沿った契約書を作成します。特に留意する点は、上述の条文27条、28条は明示する必要があり、明記されていないと、たとえ「総ての権利を譲渡する」と文言が記載されていてもこの部分が譲渡されていないことになります。譲渡を受けていないと、原画の配色、ポーズなどを変更しての使用が一切認められず、ひこにゃんはここの契約が不十分であり民事調停まで発展しました。また、この譲渡を受けていないと着ぐるみやぬいぐるみの製造もできなくなります。山口のエコハちゃんは、契約は大丈夫だったのですが、いざ立体化したときピカチューに似てしまい問題となりました。
 
3)外注段階:着ぐるみを外注する場合、原画に表れていない背面について必要な創作を外注先がおこなうことがあります。それはそれで著作権が発生しうることですので、外注先にも著作権譲渡の契約を念のためしておいた方が良いと思います。
 
4)バリエーション展開段階:特定のシールのみの使用許諾であれば問題は生じないですが、人気キャラクターとなるほど、様々な改変使用要望が利用者から出てきます。あまりに改変したものだと同一性保持権を原著作者から主張されます。例えば、せんべいの焼き印にしたとき原著作者が特にこだわった部分が潰れたとすれば、問題となる可能性があります。この同一性保持権は、契約では絶対に譲渡できない部分であり注意が必要です。原著作者の名誉・声望を害するような改変利用は認められません。サザエボン(バカボン+サザエさん)事件が有名です。
 
5)その他:せんとくんの様に、それはないだろう戦略?で一躍有名にする方法もありますが、要は、原著作者との関係、および、有償であるかを含めての使用許諾のルール作り、運用が実際には重要と思います。

日本弁理士会中国会 弁理士 田辺 義博