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「特許の出願の動向」

2020.12.16

日本の特許出願件数の動向をご存じでしょうか。昨年(2019年)は約30万8千件、5年前の2014年は約32万5千件であり、過去5年間で1万8千件程度減少しています。ちなみに10年前は約34万5千件であったので、過去10年間では1割程度の減少が見られます。
一方、世界に目を向けますと、主要国における特許出願の合計件数は過去10年間で50%程度の大幅な増加を見せています。これは、中国国内での出願件数の増加が顕著であったことが主な要因ですが、それだけではなく、例えばヨーロッパ、アメリカ、韓国、インドネシア、シンガポール、タイ、ベトナム、フィリピン、インド等で出願件数が増加傾向にあったことも影響しています。このような世界の情勢を鑑みますと、日本で特許出願件数が減少傾向にあるのは少々さみしい感じがします。
ところが、日本国特許庁を受理官庁とした国際出願(PCT出願)は、増加傾向を示しており、10年前が3万1千件程度であったのに、昨年は5万1千件程度で、過去10年間で約2万件も増加しています。ちなみに、日本国特許庁が受理するPCT出願の大部分の出願人は日本企業です。
PCT出願は、出願料が国内出願に比べて高額であるとともに、国際調査料も支払う必要があります。しかも、それだけで権利化の手続が終わるのではなく、各国への移行手続も必要であり、そのときにも費用がかかります。
このように費用が高額になるPCT出願の件数が日本国内出願に比べて大幅に伸びているのはなぜでしょうか。要因はいろいろと考えられますが、大きなところでは、日本企業が海外へ活動の場を広げて、海外での競争力を確保しようとしていることにあるのではないでしょうか。このような状況は、近年の特許事務所における実務の上でも感じられるようになっており、PCT出願による海外での権利化を望まれる企業が多くなっています。ただし、上述したようにPCT出願は高額であり、出願しただけで権利化に結びつかなければ費用が無駄になってしまう場合もあります。よって、出願前には、権利化の可能性を見極めるための事前調査を行うことや、出願方針の詳細検討、明細書への記載事項の充実等を図る必要があります。

(日本弁理士会中国会 弁理士 齋藤克也 )