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「伝統工芸品・工業製品の原産地・サービス提供地の地理的表示」

2023.06.26

当事務所から 10 分も歩くと宮島口桟橋に着く。
今年の岸田首相のウクライナ訪問・G7サミットで衆目を集めた宮島杓子、伝統工芸品の一つとして知られる。
地理的表示 GI(Geographical Indication)保護制度は、日本では農林水産品に限られているが、保護対象を工芸品・工業製品・サービス提供地の表示に拡大する世界の動きがある。そもそも TRIPS 協定による地理的表示保護は、農業分野へ限らないことが背景にある。世界知的所有権機関(WIPO)は、毎年知財に関する常設委員会を開き GI も一つのテーマである。
昨年末、工芸品・工業製品・サービス商品をテーマに先行実施(予定)国(共同体)の情報共有セッションが開催され出席する機会を得た。そこでは、ガーナの手織り工芸品「Bolga Kente」,ブラジルのイノベーションの中心地の地理的表示「Porto Digital」,セルビア共和国の医療・観光サービスの地理的表示「Cigota(チゴタ)※」(高地の清廉な空気が精神衛生に良いとされる)が紹介され、併せて、欧州知財庁によって EU の工芸品及び工業製品 GI 登録制度の創設が計画されていることが報告された。EU 域外国もEU の GI 登録を通じて、リスボン協定批准国(日本は未批准)へ世界保護を拡大できるようになる。
日本の GI の工芸品・工業製品の原産地あるいはサービス提供地の地理的表示、及び世界主義への対応は途上である。視野を広げるため GIの世界取り組みの進捗を弁理士へ紹介を予定するが、中国地方の工芸品・工業製品の原産地・サービス提地の地理的表示 GI 登録制度のニーズを知る機会もいつかあればと思う。工芸品・工業製品の地理的表示 GI 登録制度創設は、所与の品質、評判、商品サービスの特性(品質)が基本的にその地理的起源に起因するものであることの審査体制(基準)が求められ、それは制度的チャレンジの一つであり、準備期間が必要であろう。
※Cigota(チゴタ):実際の表記はラテン語で”C”の上に小さな v(ハーチェク)

(日本弁理士会中国会 弁理士 久保 雅裕)