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「『スマホ競争促進法に基づく遵守報告書』に係る知財対価規制の諸課題 -「比例原則」遵守とTRIPS協定第31条懸案-」

2026.06.15

近時、我が国においてはグーグル社・アップル社等のプラットフォーム事業者(「指定事業者」)によるスマートフォン事業への規制を念頭に、同事業に係る反競争的行為規制に関する法律案(「スマホソフトウェア競争促進法」)が2024年国会にて可決成立し、本年2026年初頭には『スマホソフトウェア競争促進法に基づく遵守報告書(令和8年2月17日)』への情報提供意見募集が告知されている状況があります。

特に同報告書に係る同法第8条第1号下での法規制運用においては、各種アプリケーションを開発提供する個別アプリ事業者による、グーグル社・アップル社等の指定事業者のアプリストアを利用する態様により提供されるアプリケーション内の購入課金等(「アプリ内課金」)における決済支払手段提供サービスに関し、a)アプリ内における指定事業者以外の者による代替的な支払管理役務の利用、又はb)外部ウェッブサイト誘導等によるアプリ外における指定事業者以外の者による代替的な支払管理役務の利用の選択利用時における、指定事業者が個別アプリ事業者から徴収するアプリストアサービス手数料等の各種手数料については、手数料無償とすることを義務付けられ得るか、又は合理的水準料率での手数料収受が認められるべきかが議論されています。

この点、指定事業者はOS、各種インターフェイス技術情報、各種開発ツールキット、アプリストア・システム環境及びその他関連技術資産等のシステム・プログラム・技術情報などの開発構築、並びにこれらの安全性・信頼性とインテグリティを高度に担保のうえ維持運用するOS、インターフェイス、ツールキット及びアプリストア等の運用保守サービスの実施にあたり、多大な資本投下を行い、これらに実装され関連する知的財産を広く保持していることに留意が必要となります。かかる関連知的財産(ノウハウ・営業秘密、特許権、財産的情報、ブランド・商標・周知著名表示及びその他知的財産)が提供する付加価値の享受を、個別アプリ事業者が実施するアプリケーション事業につき許容する対価として、当該事業者によるアプリ内課金に対する合理的水準料率での各種手数料収受が指定事業者には認められる必要があると考えられます。なお価格規制を強いることは勿論不適切として、そのような水準は、現実の実務慣行を基礎とするべきものであり、「コストベース・アプローチ」法による仮想的な理論値推計による実務慣行から乖離した検討がなされるべきでないこともまた当然と考えます。

仮にかかるアプリ内課金に対する合理的水準料率での手数料収受が禁止され、(知財価値フリーライドとなる)対価無償による支払管理役務の選択的利用への合意が指定事業者に命じられるときには、a)行政法理論上の「比例原則」遵守への適合性、及びb)条約法上のTRIPS協定第31条第h号等遵守への適合性への懸念が国内外から指摘されるおそれがあり、ひいては私有財産への過度規制による経済的自由権制限の可能性(憲法第29条第1項ほか)の適示を受けかねないものと解されます。今後の動向に、我が国知財制度堅持の観点、並びに(筆者教鞭の山口大学技術経営研究科での)「非市場戦略モデル」分析視点からも注視を要すると考えられます。


日本弁理士会中国会 弁理士 竹内 誠也