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「AIに仕事を奪われる?」

2023.07.26

半年ほど積読だった「AI2041」(カイフー・リー&チェン・チウファン著)をやっと読みました。原著の2021年から20年後の、人工知能(AI)がもたらす10の未来が小説+技術解説の形で綴られます。今年3月以降、「生成系」「対話型」AIに関して利点や懸念が雑誌・新聞・TV他で溢れていますが、「未来3」では、言語処理AIとしてのGPT-3の能力とフェイクニュースを平気で作る等の欠陥までが既に指摘されています。また、「未来8」の解説は“AIに置き換えられる仕事”に触れ、著者はAIの苦手分野として創造性・共感・器用さの3つを挙げています。
特許関連の仕事はどうでしょう?例えば発明を考えると、言語処理AIがあくまでも学習させた情報や事例に基づいて発明を説明する文章を作成する、との仕組からすれば、AIは現時点では「AIが発明する」よりも「発明のヒントとなる手掛かりを与えてくれる」=人間の創造性を助けるツール、と個人的には思います。また、特許出願用の明細書をAIと「共同で」作成する取組も、検索すると種々情報が出てきます。けれどもAIが出力するのは、東京大学が4月に学内向けサイトで公表した「生成系AIについて」での表現を借りれば“非常に話し上手な「知ったかぶりの人物」と話をしているような感じ”の文章です。滑らかに繋がっているけれど意味の理解・事実や論理の正確性が危ういかもしれない内容を、特に私の専門の化学分野で細部まで検証していくのは大変です。人間が創造性を発揮した結果を文章にする弁理士の重要な仕事は、今のところAIに取って代わられることにはならない、と考えています。
とはいえ、積読していた間にGPT-3.5がGPT-4にバージョンアップしてしまうスピード感だと、2041年にはAIが「意味を理解して文章を繋げられる」ことも、発明さえも可能なのかもしれません・・・

(日本弁理士会中国会 弁理士 津田 智康)