「時差」
2026.07.21
特許
ワールドカップブラジル戦の翌日の7月1日が、このコラムの原稿締切日です。前回のワールドカップ中にもこのコラムを担当しましたが、原稿締切後にクロアチアにPK負けしたので、メルマガ発信直前に差し替えてもらいました。今回は敗退しましたので差し替えをお願いすることはなさそうです。
現地では前日の正午のキックオフでしたが、ブラジル戦が行われたヒューストンと日本の時差は14時間ですから、日本では午前2時のキックオフでした。リアルタイムでTV観戦すると翌日の仕事に支障が出そうであり、時差を痛感された方も多いと思います。
さて、特許出願は早い者勝ちだと言われますが、厳密なところはどうなのでしょうか。
新規性について特許法29条1項は「特許出願前」に公知だった発明は特許しないと規定しています。日本では1分1秒の差でも考慮するという取扱いであり、午前中の他人の発表を聞いて午後に特許出願することはできません。また仮に時差があったとしても日本時間に揃えて判断するようです。
一方、特許出願同士の先後についての特許法39条では、同一発明について複数の特許出願があったときの取扱いを定めていて、出願の先後を日単位で判断することにしています。したがって、出願日が同じならば、朝出した人も夕方出した人も同じ扱いです。
そうなると、時差が気になってきます。日本時間の早朝に特許出願したのと同一の発明を、それより後に第三者が、アメリカで「前日」の夕方に特許出願することも可能です。そしてその米国出願の優先権を主張して日本に出願すれば、出願の先後は逆転してしまいます。
また、優先日から1年の最終日の深夜12時を過ぎてしまっても、スイスのジュネーブにある国際事務局に直接国際出願すればまだ前日の夕方ですから、優先権の主張が可能です。
国境を越えて簡単に情報通信が可能な現代では、各国の日付基準で判断するとおかしなことが起こるということです。
さて、2030年のワールドカップは、スペイン、ポルトガル、モロッコなど計6か国で開催されるようで、またまた時差に悩まされそうです。果たして、4年後の日本代表はどこまで勝ち上がるのでしょうか。また、4年後も開催期間中にこのコラムの当番が回ってくるのでしょうか。
日本弁理士会中国会 弁理士 中務 茂樹